NRW州出身のイェンス・シュパーン連邦保健大臣のリーダーシップの下、ドイツ政府はいわゆるデジタルサービス法(DVG)を可決した。
法律の目的は、ドイツでヘルスケア供給サイドのデジタル化を促進すること、また医師が処方する「治療用アプリ」とその応用費用を疾病金庫から償還させること、さらに金銭的な追加インセンティブを与えてドイツ全国で電子患者日誌を導入することだ。治療用アプリにはオンライン診療や、血糖値の電子文書化などの機能も含まれる。新しい法律に対しては、アプリによって個人データが収集されること、さらにそのデータ保護が十分なのかという懸念の声が上がっている。しかし、この法律は現時点では医療の全領域に適用されるわけではない。対象となるのはリスククラスIおよびIIaの医療機器(特に:歩行補助具、車椅子、患者用ベッドおよび歯科材料、診断用超音波機器、補聴器)に限られている。クラスIIbおよびIII(使用時に危険性が増加、特に:麻酔機器、人工呼吸器、X線機器、血液バッグ、心臓カテーテル、人工関節、冠動脈ステント)は対象外である。
シュパーン連邦保健大臣のリーダーシップのもと成立したこの法律により、ドイツで緊要な課題であるヘルスケアのデジタルソリューションという市場の形成が期待されている。具体的には、特にスタートアップ関連の新たなデジタル医療技術の成長力を強化し、また患者の個別化医療を推進することだ。こうして、この法律は、デジタルソリューションを長期的には標準のサービスへと移行させ、医療サービスの革命に拍車をかける役割を果たす。
デュッセルドルフで11月21日に閉幕した世界最大規模の医療機器見本市MEDICA/COMPAMEDでも、新法律の成立でどのようなデジタル技術が将来のヘルスケア革命に貢献するかが展望され、また、技術の紹介のみならずビジネス界、政界、学術界の専門家や意思決定者等が議論を繰り広げた。
なお、12月2日(月)には、ドイツ科学イノベーションフォーラム東京(DWIH)が、日本・ドイツ・フランスの3カ国共同フォーラム「AIアプリケーションの品質基準と医療情報統合データベース」を東京で開催する。人工知能がサポートする医療システムをテーマのひつとする同フォーラムは、まさに時節を得ている。ドイツ遠隔医療・健康促進研究所のCEOベルント・アルトペーター氏などの専門家の提言に基づき、同フォーラムは、ヘルスケア分野における新たなアプリケーションの品質保証の必要性と可能性を中心に議論を行う予定。