この戦略の中で、電気料金の負担軽減に関しては、ドイツ連邦レベルで特にエネルギー集約型の企業、中小企業、個人を対象に対策を講ずることを挙げている。また、重要課題として充電インフラの普及促進を掲げ、対策として認可手続きの迅速化、並びに土地所有者や企業への資金提供を提案している。さらに、地熱や 排水熱のような再エネ熱分野においても、開発・整備戦略を策定している。
エネルギー部門の進展と課題: 再生可能エネルギーに関しては、主に風力発電と太陽光発電によって2030年までに発電量を少なくとも34ギガワットまで倍増させる計画だ。水素に関しては、ベルギー、オランダ、デンマーク、スコットランドなどからの輸入を継続するものの、NRW州内の水素経済の拡大を支援していく。また、エネルギー・インフラの認可手続きにおいては、管轄を統合するなどの対策を通して迅速化する。
現在、NRW州の風力発電の普及は目覚ましい。2024年上半期、NRW州内では61基の風力タービンが新たに設置された(前年比43%増)。さらに、ドイツ最大の電解プラントがオーバーハウゼンで稼働開始した。「NRWエネルギー・熱戦略」には、連邦政府とEUに対する50の要求が盛り込まれており、その中には消費者に対する補助金の必要性や、対策を講じるための資金援助も入っている。地域暖房に関しては、供給網の拡大を引き続き目指すものの、しかしその利用を強制することはしない。また、ヒートポンプについては中心的な技術と位置付けてはいるが、都市中心部の集合住宅で使用するにはまだコストと技術の面で課題がある、としている。
このような戦略に対して、社会民主党(SPD)やドイツ環境自然保護連盟(BUND)からは懸念の声が上がっている。SPDは「戦略は、具体的な対策を伴わない目標を列挙しただけのもの」と批判。BUNDは、「承認手続きの迅速化によって、住民参加権や環境基準が犠牲になってはならない」と懸念を露わにした。これに対し、ノイバウアー副首相 兼 経済大臣は「NRWエネルギー・熱戦略」は将来の技術的・経済的発展に適応させるべく、柔軟に策定してあると強調している。まずは2030年の中間目標に向け、進捗を注意深く検証していくことになる。
日本企業にチャンス: 日本企業にとっても、NRW州の再生可能エネルギー、水素技術、エネルギー・インフラ事業への参画は大きなビジネスチャンスだ。NRW州には、すでに数多くの日本企業が進出しており、ドイツ市場で革新的技術の開発に貢献している。三菱重工業、パナソニック、トヨタ自動車、旭化成、住友電気工業、富士通がその例で、風力タービンなど風力発電分野や、太陽光発電装置やエネルギー貯蔵システム、水素技術などの分野で事業展開している。こういった日本企業は地域からの助成支援や革新力を活用しながら、技術開発と実用化を進めているのだ。
【総括】NRW州は、持続可能な技術を促進し成長市場を形成しようと取り組んでいる。この成長市場で事業展開しようとする日本企業をNRW州は歓迎し、サポートする。また先端エネルギー技術の開発と応用を促進し、さらには欧州市場における企業の競争力強化にもつなげる。