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NRW州でCDUと緑の党の新連立政権発足

ドイツ ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州では初となるキリスト教民主同盟と緑の党とによる「黒緑」連立政権が船出する。その連立協定が日独関係にもたらすチャンスとハイライトをまとめた。

2022年6月28日、ヘンドリク・ヴュスト(キリスト教民主同盟 略称: CDU)はノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州議会においてCDUと同盟90/緑の党(略称:緑の党)の票をもって首相に指名されたことを受け、州憲法に定められた「首相の大臣任免権」(第55条第1項)に基づき新内閣を翌29日に発表した。

CDUは5月15日に35.7%を集めて州議会選挙の明らかな勝利者となった。一方、緑の党は2017年と比較してほぼ3倍となる18.2%の得票率を得、社会民主党(略称SPD)の26.7%に次いで第三党となった。これまでNRW州はCDUと自由民主党(略称FDP)とによる連立政権が州政府を担ってきたが、今回の投票結果により、その続行が不可能となっていた。

その後、CDUと緑の党の両党は3週間に及ぶ交渉の末、2022年6月23日、NRW州の州政に関する連立協定を発表。ヘンドリク・ヴュスト(CDU)モナ・ノイバウアー(緑の党)の両党州代表は、両党間の良好な協力関係を評価し、将来への見通しも非常に楽観的であった。

この交渉時、職務執行内閣の州首相という立場だったヘンドリク・ヴュストは次のようにコメントした。「相容れないと思われていたことを受け容れ合うことが出来た。」 一方、緑の党州代表ノイバウアーは「今後5年間にNRW州を一層社会公正的にし、環境に更に配慮し、更なるデジタル化を図り、また経済も一層強化していかなければならない。」と強調した。なお、ノイバウアーは6月29日、経済・産業・気候保護・エネルギー大臣に就任し、また同時にNRW州副首相も兼務することとなった。

このNRW州初となる黒緑連立協定は、6月25日、CDUはボン市にて、また緑の党はビーレフェルト市における党大会で、いずれも大多数をもって承認されたもの。これによりドイツの州政権では4つ目となるアボカド(黒緑)連立政権が発足を迎えたのだ。

今般の黒緑連立に対し、経済界からは好意的な声が寄せられている:
NRW州手工業会アンドレアス・エーラート会長>
この連立協定には「責任、現実主義、持続可能性」がある。NRW州が将来の大きな課題の解決に向け、手工業、中小企業、職業教育、イノベーションにかつてないほど明確に期待してくれている。非常に説得力ある協定だ。
NRW州商工会議所ラルフ・シュトッフェルス会頭>
現在の難局を考えれば、州の新政権がこれほどにも早期に成立し、大きな挑戦を受けて立つ姿勢が良い。連立協定に盛り込まれた政策の多くについては、これからじっくり見ていく。

連立協定は146ページにも及ぶ。その中でも特に目をひくのが気候保護だ。何故なら気候保護に関して39ページも費やしているからだ。NRW州を「ヨーロッパ初のカーボンニュートラルな産業地域にすること」が明確に記載されている。

ドイツの2030年までの脱石炭実現合意は周知の通りだ。ウクライナ戦争によってエネルギー確保の課題が浮き彫りになっているが、ドイツ最大の産業州NRWでは、その脱石炭期限まで褐炭が電力供給確保の役割を担うこととなる。一方、再生可能エネルギーは今後5年間に大幅に拡大していく。少なくとも1,000基の風力発電設備の新設を目指しており、この実現化には一律の最低距離規定の廃止が前提となる。また新築建造物への屋上ソーラー設置の義務化もNRW州は段階的に導入する。

NRW州は、国内レベルでもヨーロッパレベルでも多角的でルールに則った経済・貿易秩序、すなわち市場の開放と相互の自由貿易を志向し、また、社会・環境・人権スタンダードの上に立つ秩序の実現に尽力する。

<ヨーロッパ>

  • ベネルクス三国と共に革新的で競争力ある共同経済圏の構築を目指す。
  • デジタル・プラットフォーム「NRWグローバル・コネクト」を他地域へも拡大。
  • ウクライナの復興及びEU域内市場への統合に向けて支援していく。

<アジア太平洋地域>

  • 長年の、且つ同じ価値観に基づく日本との信頼関係を更に強化。
  • アジアの民主主義諸国との堅固な関係構築。
  • 中国とは戦略的に様々な活動をこれまで以上に強力な調整のもと行う。

発足した黒緑連立政権の方針を受け、NRW.Global Business(NRW州貿易投資振興公社)は、今後数年間はデジタル化、気候保護、持続可能性、バイオサイエンス、ニューモビリティといった領域の未来テーマに焦点を当てて行く。このため、NRW州と日本との経済関係に関しては、これまで以上に深化・発展のチャンスが広がっている。

出典1 2 3 4 5 写真:Land NRW / Michael Gottschalk