このグリーン転換は物件所有者と賃借人にコスト増加を、そしてドイツ不動産市場に価格の二極化をもたらすであろう。購入者にとって建物エネルギー効率の良し悪しは益々その重要性を増してきているからだ。
21st Real Estate社は先頃、エネルギー性能証明書付き住宅物件約155万件とドイツ連邦統計局のデータを基に国内不動産市場を分析した。その調査によれば、殊にNRW州はこのグリーン転換の影響を受けるという。なぜなら、ドイツ国内でエネルギー消費量が最も多い上位10都市が、すべてNRW州の都市だからだ。なお、NRW州ギュータースロー市は消費量第1位で、住宅4棟のうち3棟がエネルギー改修の必要ありとの結果となった。
その結果、ドイツでエネルギー消費量が最も多い上位10都市は、すべてNRW州にあることが判明した。とりわけ、エネルギー消費量第1位のギュータースロー市では、住宅4棟のうち3棟がエネルギー改修の必要性があるという。
ドイツ不動産価格は2023年第1四半期、前年比7%の下落を記録し、金利上昇と実質可処分所得の低下が市場の不安定化を引き起こし、再び安定するにはまだ時間を要する見込みだ。不動産市場の価格決定の大きな要素は従来からの「立地」「用途」「資金調達コスト」「家計所得」だが、今後、住宅のエネルギー効率が価格形成にますます大きな影響を与えることは確実だ。
2019年の全エネルギー消費量のうち、個人世帯の暖房が17.5%を占め、これは家庭部門におけるエネルギー消費量全体の約3分の2となることから、気候変動の目標達成に不動産セクターが担う役割が決して少なくないことが分かる。ドイツでは、2022年に再生可能エネルギーで賄われた家庭用エネルギー消費量は20%未満。NRW州に焦点を当てると62%以上がガス、14.2%が石油、13.4%が地域熱供給での暖房だ。つまり、NRW州には気候変動対策としてまだやるべきことが山積しているということだ。
EUでは2033年までに全ての住宅にエネルギー消費効率を示す「エネルギーラベルD」以上が義務付けられている。このためには、ドイツでは今後10年間で1100万戸の一戸建てと二世帯住宅、150万戸の集合住宅を改修する必要があり、これはドイツ全体の住宅ストックの64%に相当する数だ。改修費用の見込みは7400億ユーロから1兆ユーロと高額で、戸建住宅所有者では11〜17年後に、集合住宅所有者では約14年後になってやっと償却できる試算となる。
欧州・ドイツ不動産市場がグリーン転換へと動きを進める中、エネルギー効率の良い設備(ヒートポンプ、熱交換器、暖房システム等)、エネルギー・ソリューション(太陽光発電システム、太陽熱、バッテリー等)、建材(断熱材等)のサプライヤーには大きなビジネスチャンスが到来している。