7月7日、NRW州を含む自動車産業を大きな経済基盤とする4つのドイツ連邦州首相が、ドイツ自動車産業の将来に関するポジションペーパーに署名した。電化とデジタル化による自動車産業の変革を推進する上で、政治が担う役割と実施すべき具体的対策を提言してい
就任間もないNRW州のアーミン・ラシェット州首相はヘッセン州、バーデン=ヴュルテンベルク州、バイエルン州およびニーダーザクセン州の州首相等と、このポジションペーパーを7月7日にベルリンで署名した。そして、各連邦州が自動車産業の新しい枠組みを作る際に協力し合い、また連邦政府に対する要求でも歩調を揃えることで合意した。
上述の4つの連邦州では自動車産業に関連する就業者数が多いことから、自動車産業は特別な存在となっている。たとえば、NRW州では800社を超える自動車関連企業が存在し、20万人以上の従業員を雇用している。NRW州には外国自動車メーカーの生産拠点や事務所のみならず、サプライヤー企業も多く、これによりNRW州はドイツ自動車産業の重要な拠点となっている。
しかし今、自動車産業は大きな変化に直面している。電化、デジタル化、ネットワーク化およびオートメーションは、近い将来、自動車産業全体に革命をもたらすトレンドだ。 この変革のプロセスでは、バリューチェーンの川上から川下に至るあらゆる自動車産業の関連企業と雇用に影響が出る。さらに、製造方法そのものと従業員に対する要求も変わってくる。
ポジションペーパーの中では、自動車産業で起きている変化として4分野、技術革新、構造転換、モビリティシフトおよびエネルギーシフトが挙げられており、これらは自動車産業が克服すべき課題と言える。さらにパリ協定の合意に鑑み、自動車業界は駆動技術を中期的に排出ガスフリーで気候ニュートラルなモビリティシステムに抜本的に転換する圧力も受けている。
まったく新たな技術的ソリューションの開発は無論であるが、しかし既存技術の改良の余地も無視してはならない。 例えば、内燃機関の効率を高め、代替燃料を使用することも可能であろう。あるいは、新材料や軽量技術の技術革新を活用して、より厳しい気候保全の目標達成に役立てることもできる。それゆえ、ポジションペーパーでは、すべての技術にオープンなアプローチを追求していくことを明示している。
さらにネットワークとオートメーション化を強化すれば、貨物輸送と作業機器の連携を改善すること、あるいは交差点や都市部での交通量を削減できる。これらの領域での変革を促すためには政策転換が必要と自動車産業を基幹産業とする4連邦州は見ている。そのため、ポジションペーパーでは、今後もドイツ自動車産業の発展を積極的に支援し、将来の方向性を明示する政策を打ち出すことで、自動車を所有する人々の期待に応えていく方針を明確にした。
そしてポジションペーパーの最後に、自動車産業の変革を促進するために各連邦州で実施する7つの具体的なプロジェクトが挙げられている。また連邦政府に対しては枠組み条件改善への一層の努力を促す9つの提言を行っている。 署名した各連邦州政府はこのポジションペーパーの策定により、自動車産業の動向を注視しているだけでなく、産業界と力を合わせて課題克服に努めていく意思を明確にした。