技術革新、教育、インフラ、交通網、エネルギー分野への投資は、社会と経済が十分に機能するために重要な基盤を成すものだが、年金や医療費などへの支出や、また近年は特に地政学的な対立を受けて国防費とも競合している。
ケルンのドイツ経済研究所(IW)とデュッセルドルフのマクロ経済・景気動向研究所(IMK)の調査によると、インフラを整備し、経済と社会の脱炭素化を推進するためには、ドイツ連邦共和国だけでも今後6000億ユーロの投資が必要だと試算されている。
これからの10年間で、教育制度の改善、地方自治体における投資停滞の解消、公共交通機関の整備や建物の改修などを促していくためには、巨額の資金調達が必要となる。そのため、課題解決は財政的な負担を意味するが、しかし同時に成長と革新の大きなチャンスももたらす。
エコノミストの試算によると、ドイツの市町村においてインフラなど投資停滞の問題を解消し、異常気象に備える対策を実施するためには、1770億ユーロが必要とのことである。さらに2000億ユーロの資金が気候保護、特に建物のエネルギー改修と再生可能エネルギーの拡大に充てられる必要がある。また、鉄道網を高度化し、効率的で環境に優しい公共交通を拡大するためには、交通部門と近距離公共交通に約1270億ユーロが必要と試算されている。加えて、教育インフラや公営住宅に対しても、現在の需要を満たすためには更なる投資が求められる。
そこで資金調達の手段としては「インフラ基金」を活用することやドイツ連邦政府、ドイツ連邦州が将来投資の一環としてローンを組むことを認める「黄金律」を適用することも選択肢のひとつとして考えられる。そんな中、NRW州では持続可能な州の財政政策によって投資条件を整えつつある。
ドイツ経済研究所(IW)のミヒャエル・ヒュター理事とマクロ経済・景気動向研究所(IMK)のセバスチャン・ドゥリエン理事は、直面する課題は厳しいものの、これらの投資からはチャンスが生じると強調している。迅速に刷新を図ることが経済と雇用に恩恵をもたらすだけでなく、次世代のための持続可能な未来を確保することに繋がるのだ。
日本を含む外国企業にとって、NRW州やドイツでのイノベーション、教育、インフラ、交通網およびエネルギー分野への将来的な投資は、絶好のビジネスチャンスを意味する。今年(2024年)2月に発表された米マイクロソフト社(MS)の大規模投資もこれが故であり、米MSはNRW州のAIデータセンター整備に32億ユーロの投資を決定した。
参考資料 図: IW/IMK資料の図を日本語訳